まず冒頭の魚市場が死ぬほど不潔なの。この映画ってば視覚映像的には色とかこってり系の濃い質感で撮ってくれてるため、その不潔っぷりが尋常じゃなく伝わってくるので(笑)、見ていてゲロ〜ンです。しかも主人公が少年に成長して労働力として売り飛ばされた先がこれまた「皮なめし業」という言わずと知れた悪臭バリバリな職業環境で(笑)、皮なめし職人の親方が絶対にウンコより臭そうなお近づきになりたくないタイプの人なのですわ(笑)。こんな風に「これでもか!」と次々に悪臭を想像させる映像を立て続けに流し、いよいよ主人公が青年になった頃、パリの街中へ配達(皮)を命じられ、そこから別世界へスイッチするのです。
異世界、街、目を閉じて、焼き立てのパン、生牡蠣、ワイン、白粉(おしろい)、口紅、そして香水……豊かな“富の香り”を貪欲に貪る主人公。その時、ひとつの芳しい香りに激しく主人公が反応する。夢中で匂いを辿ったその先には、プラムを売り歩く赤毛の少女。彼女の香りの中に、生まれて初めて“幸福”を感じ、味わった事のない満たされる感覚に包まれる主人公。だが誤って彼女を死に至らしめてしまう。消えゆく命と共に、幸福の香りも瞬く間にかき消える。この「忘れ得ぬ香り」の再現にこの先、猪突猛進する主人公。
こうやって文章にするとマトモな映画に感じると思いますが、この映画って女性の視点から見たらとんでもなく不愉快な作品だと思いました。だって主人公はただの変質者・変態ストーカーですもん、女からしたらこういう男はただただ恐ろしいだけです。いや、分かるんですよ、何を表現したいかは。ですが「分かる」ということと「受け入れる」ということは別の話し。人間個々の趣味や嗜好の個体差を考慮してもなお、後味の悪さは払拭出来ませんでした。人としての尊厳を否定されたような部分が、私にはNG。私には殺される女性達とその肉親が可哀想でなりませんでしたし。香りというもので「愛と生」を表現するのは分かるのですが、そのために「死」が際立つ結果になり、しかもその「死」は「手前勝手な欲望を満たすための殺人」としての結果なので受け入れられるハズがない。見始める前に、どうして「ある人殺しの物語」なんて入れたのかな?と不思議だったんですが、見終わってみればなるほどそうだな、これは「人殺し」の映画なんだなと納得。ラストが「えっそう来るの?」というか「なんじゃそりゃ」という面白いオチがついてるのですが、ここを「文学」ととるか「お笑い」ととるかは意見が分かれそうな気がします。ギリギリ文学なのかなぁと思えますが、でも私は正直笑ってしまいました(笑)。
キャストはハマッてて良かった。主人公グルヌイユ役は相当キテたと思います。この役をジュード・ロウとレオナルド・デュカプリオも演りがったという話しもあるが、この二人だったら全然怖くなくなるだけでなく、リッチテイスト過ぎて貪欲さが薄れてしまい何もかも台無しなので、この役者さんでヨカッタと思う。映像や音も文句なし。美しく、濃厚で、計算づくで見事でしたが、私はもう観たくはありません。ですが、一度観ておく事はお薦め出来るという微妙な位置づけ(笑)。なんつーか悪趣味なファンタジーなのですわこれ。
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