おがたけん(緒形拳)
大好きな役者が逝ってしまった。緒形拳。すぐに脳裏に浮かぶのは、必殺仕掛人の藤枝梅安、そして個人的には映画『火宅の人』の桂一雄(檀一雄)である。前者は俳優としての彼の演技力を世に知らしめた作品として、後者は「堅物」で知られていた彼が、作家檀一雄の破天荒な生き方を見事に演じきった傑作として、心に残る。
今朝のテレビは一斉に彼の死去を報じ、つい先日行われた10月からの新番組「風のガーデン」制作発表会見の様子を流していた。そこで彼はドラマの内容に触れ、「否応なく人は老いて... 病んで...そして否応なく死が訪れる...」と語っていた。彼は自分の死期を悟っていただろうか。おそらく、悟っていたのではないか。だとすれば、重く、切実な言葉だったはずだ。そして、そのコメントを語る彼から、私は彼の最後のメッセージを受け取ったような気がした。
ゆっくりと、ゆっくりと「否応なく...人は...老いて...」と語り、次の言葉を選んでいる時である。彼はすっと、背筋を伸ばした。姿勢を正してから次の言葉「否応なく...病んで...」と続けたのである。「俯いてはいけない」と、思ったのではないか。「俯いてはいけないのだ」と伝えたかったのではないか。私にはそう見えた。そしてコメントの最後に「有り難うございました」と一言。
こちらこそ「有り難うございました」と伝えたい。男という生きものの激しさ、やさしさ、だらしなさ、そして潔さ、全てを鮮やかに見せてくれた俳優として、彼は私の中で輝き続けるだろう。
- by Shirokuman
- 10/07/2008
- ・新明解シロクマ辞典・
