なかたひでとし(中田英寿)
2006年ワールドカップの直前に彼は言った。「日本代表チームは強くなってるんだろうか?一人一人のテクニックやパワーは確かに上達している。でも、チームとして強くなっているんだろうか?」
彼の言葉が正しかった事は、予選敗退という結果が見事に証明した。
彼がいなければワールドカップに出場すら出来なかった事は明白である。彼は今までの日本のサッカー選手の誰よりも才能に恵まれ、努力をし、日本サッカーのために尽力した選手である。しかし...。
サッカーは意思伝達のスポーツである。試合中に数限りなく放出される「意思」というボールを、目に見えぬベクトルを信じて仲間とやり取りをするスポーツである。彼のベクトルは仲間に伝わっていただろうか?私の目にはそのコミュニケーションが見えなかった。
彼はマスコミが嫌いである。それは誰の目にも明らかで、彼へのインタービューの放映はいつも妙な緊張感を伴っている。その緊張感こそが、彼と他の選手との間に溝を作ってしまうのではないか?
彼を弁護する人は言うだろう。「マスコミは彼の本当の姿を理解していない」「彼が嫌いなのは、無知で遠慮の無いインタビュアー」「彼ほど真面目に日本サッカーの事を考えてる人はいない」「彼とコミュニケーションが取れないのは、その人のレベルが彼と違い過ぎるから」
確かにそうなのかもしれない。同じ事を繰り返し質問する無能なインタビュアーに、「あなた、僕の話聞いてます?」と苛立つ彼は間違っていない。最も得点の可能性の高いポイントに出した彼の精度の高いパスを、受け止められるだけの選手がいなかったということなのかもしれない。しかし...。
サッカーは意思伝達のスポーツである。自分と違う人間、自分の事を理解出来そうにない人間に、自分をどう伝えるかが重要なのである。彼自身がこの事を一番良く分っていたのではないだろうか。予選敗退が決定した最後の試合の後、他の選手がスタンドに手を振っている時に彼はフィールドに仰向けになっていた。
- by Shirokuman
- 07/16/2006
- ・新明解シロクマ辞典・
